じもともともに

箕輪町の土から生まれる ここにしかない器

【トピックス】
🔳先生との出会い
🔳もの作りの意味とは
🔳正解が分からない
🔳懐の深い器を作りたい

 快晴の箕輪町、箕乃窯の工房からは町を見渡す壮大な景色。工房に着くと取材班に冷たいコーヒーを用意してくれていた猪俣さん。猪俣さんの作ったカップでいただきながら和やかな空間でお話を伺いました。

 先生との出会い

 高校生の時、文化財の保存修復がしたいとの思いで奈良県の大学に進学した猪俣さん。そこでは土器や埴輪などの修復や製作を学んできました。そこで出会った教授との出会いが修繕から製作へと猪俣さんの思いを変えます。その教授は陶芸家としても活動され、焼き物をやる為に自身で井戸を掘り土地を開拓してきたと言います。
 「人としての強さが魅力的でかっこいいと思った」
 そんな教授の背中を見て、保存修復で入った世界から作る楽しさに気付かされ陶芸の「作る」世界に入りました。



 もの作りの意味とは

 足を使いリズミカルにろくろを回す猪俣さん。
 電動が主流のろくろですが「蹴りろくろ」は足でろくろを回して使います。材質も木で作られていて厚みのあるろくろ。蹴るスピードや強さを調整しながらあっという間にお碗を一つ作って見せてくれました。人力で動かすことで「全部自分の一部」と語り「ゆらぎがあった方が好き」と製作への情熱は作品作りに現れています。

 学生のとき土を掘ったことが焼き物をやるきっかけになっていると語る猪俣さん。教授の「粘土は自分で掘るものだ」という教えで、買った粘土と自身で掘ってきた粘土の大きな違いを学生の頃から感じていました。長野県にはあまり粘土がなく、岩が多いのが特徴。中々粘土に出会えないというこの場所で山に登り歩きまわって探すというから驚きです。

 自分の好きな場所に住み、その土地の粘土を自身で探しその粘土を使って作品を作る「自分で用意した粘土を使ってこの土地でやることに意味がある。自分のもの作りをする意味はそこにある。」と。



 正解がわからない

 自然の材料を使用しているので数値化出来ない分どこに原因があるのか見つけるのにとても時間が掛かる上、正解がわからないと言います。粘土を生成しているこの段階で不都合が生まれていたらその後の作業をいかに丁寧に行っても理想的なものは出来ない難しさ。

 しかし「”土の動き、傾き、揺れ”土が持っている表情が出た時、自身と土がつながり合う。そんな瞬間を探して日々もの作りをしている。」
 「土が勝手に表情を出してくれて、それを見つけるのが楽しい。」と笑顔で語る猪俣さん。正解がわからないからこそ、もの作りの真髄がそこにあるのかもしれません。



 懐の深い器を作りたい

 猪俣さんに今後の夢を伺いました。
 「ずっとあるけど、改めて見ても豊かさやおおらかさがある、懐の深い器を作りたい。なんとなくさすってしまう、気づくといつも側にあるそんな器を作りたい。」と教えてくれました。

 この器でコーヒーを飲みたい、この器にご飯を盛りたい、そんないつの間にか日常に寄り添ってくれる器。楽しい時も悲しい時も忙しい時もまったりしている時も、側にいてほしい器。器に感情はないかもしれませんが、使う人の心を受け止めてくれる器ってあると思います。箕乃窯にはそんなほっこりする毎日に溶け込んでくれる器が沢山ありました。それは猪俣さんのもの作りへの情熱が作り為す技。土を集め粘土を生成しろくろを回し窯で焼く。全ての工程で丹精を込められた世界に一つだけのそんな相棒を、見つけに来て下さい。
            

 休日には4歳と1歳のお子さんとの時間が至福の時間と微笑む猪俣さん。この取材の後もお子さんに「丸太を渡って向こう岸に行こうと誘われている」と可愛らしいお話を教えてくれました。工房にも気楽に遊びに来て欲しいと話してくれたので是非一報を入れて確認してから遊びに行ってみて下さいね。

 目に見えないものを探す旅。例え遠回りでも自分の思い描く物を追い求めゆっくりでも確実に進み続ける。一つの旅が終わってもまた新たな旅が始まる様に猪俣さんのもの作りの旅はいつまでも穏やかに続いていきます。

 学校で捨てられるはずだった椅子に座り、蹴りろくろを回す猪俣さん。静かでとてもやわらかな空気が満ちていました。



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【書いた人】
まなみさん
「22年3月に東京から箕輪町に、夫・6歳と2歳の息子たちと移住。
初挑戦の畑ではきゅうりやピーマン、ナスなど大量収穫を達成。次はハーブ類も育ててみたい。
味噌、梅干し、醤油麹、塩麹など自分で作るのが好き。次は麹と醤油を自分で作れる様になるのが目標。山登りにも挑戦したいと思案中。」
     


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