じもともともに

挑戦し続ける PLYLIST(プライリスト)

日差しの入る窓の向こう、遠めに山並みを感じる自宅2階のアトリエ。そこには、整然と並ぶ道具たち。その前で、迷いのない言葉で話すPLYLISTの小尾口さん。繊細さと器用さ と自信、でも、一歩ひいた視点を持つ、そんな人柄をひしひしと感じながら、PLYLISTとはどんなものづくりをしているのか、お話を伺ってきました。




【トピックス】
①「こんな大人になりたい」からはじまった
②職業はPLYLIST
③9枚の木を重ねる
④小尾口さんって、どんな人?!
⑤“自分の生き方が製品に深みを生む”が理想
⑥挑戦しつづけるPLYLIST



 「こんな大人になりたい」からはじまった

小尾口さんがものづくりをはじめたきっかけは、「こんな大人になりたい」という“憧れ”からでした。理系の大学院を卒業後、企業の研究職に就くも、体調を崩し、退職。そんな頃、 地元(長野県下諏訪町)で出会った木製スピーカー職人さんと出会い、いつも楽しそうに生きている彼をみて、「こんな大人になりたい」と思ったのだとか。彼の影響もあり、 木工の世界へ進みます。長野県上松町にある長野県上松技術専門校にて、1年間木工を学びました。このとき、奥さまも一緒に木工を学び、現在は、奥さまと二人三脚で、ものづくりに 取り組まれています。今回は、達貴さんにお話を伺いました。




 職業はPLYLIST

PLYLISTとは、小尾口さんの造語。「PLY(重ねる・素材や技術をより合わせる)」+「その人の暮らしや価値観に合うプレイリストをつくるようなものづくり」という想いでつけたそうです。 「職業はプライリスト」と言えることが理想だと話します。 木工のほか、革細工、象嵌、彫金、金つぎ、蒔絵など、様々な技術と素材を組み合わせて作品を作るのが特徴です。もともとの理系の体質もあるのか、「試行錯誤が好き」だと言い、 思いもよらない組み合わせを生み出し、可能性を広げています。 「そこに手をつけるのは難しいんじゃないか、と思われているところ、めんどくさがられているところ、をあえてやる。」 「普段使いするものを作りたい。普段使いできて、不思議なもの、面白がってもらえるもの、目に留まるもの、を作りたい。」   こうした想いを感じるPLYLISTの特徴的な製品があります。 革と木を組み合わせた“持ち歩く木”と小尾口さんが呼ぶ製品。身近にあるようで実は身近にない、木に触れる時間が増えるように、との願いが込められています。 そして、そこに詰め込まれた技があります。





 9枚の木を重ねる

薄さ0.2mmの突板(つきいた)を9枚重ね合わせて1枚の板を作ります。1枚ずつ繊維の方向を90度入れ替えます。こうすることで、強度が上がり、反りにくくなります。




財布に木を使うとき、小尾口さんがこだわる部分がこちらです。 ・中身を入れたときの膨らみにも柔軟に対応して欲しい。 ・革と木を組み合わせるときに、デザイン的にもステッチが欲しい。 ・革と木を手縫いで縫い合わせることで、接着剤の劣化ではがれてしまう心配をなくす。 これを解決するための“9枚の木を重ねる技”なのです。 ただし、これに取り組むには、時間とコストが圧倒的にかかります。「中途半端なものづくりをしたくない」という想いが伝わってきます。 「完成までの時間が1日多くかかったとしても、製品の寿命を少しでも伸ばせるなら、なるべく丁寧にものを作ることを心掛けたい。」と小尾口さんは語ります。


【“9枚の木を重ねる技”】について詳しくは…

⇒⇒ 制作工程の動画_youtubeへ            

⇒⇒ 制作工程の読み物_noteへ             

⇒⇒ 制作行程_Podcastへ             






 小尾口さんって、どんな人?!

PLYLISTとしての発信は、多岐にわたります。Instagramはもちろん、twitter、note、Podcast、YouTube。そして、その内容が濃いものであるところにも驚かされます。 とにかく、中途半端では終わらせない、探求心・研究心を感じます。   そんな、なんでも確実に熟してしまうさんの小尾口さんの日常を少し覗いてみましょう。 保育園に通う娘さんと過ごす時間を大切にされているエピソードがいくつかあります。 以前、こんなことを語られていました。「自作の積み木で楽しそうに遊ぶ姿をみたとき、木工をやっていて一番嬉しかった」と。最近では、娘さんのために、洗面台用の踏み台を作り、 娘さんがその踏み台に乗り、楽しそうに手を洗う姿をInstagramに載せています。 また、娘さんに作った木のいすについて、「アイデアがどこから来たか」というお話の際、“Eテレの幼児向け番組のキャラクターわんわん”と“新エヴァンゲリオン”から インスピレーションを得た、と話していました。子育てパパの一面とエヴァ世代の一面を垣間見て、小尾口さんを少し身近に感じたのでした。





そして、やはり!と私が思ったことは、コーヒー豆の焙煎をしていることです。コーヒーの焙煎は、生豆の産地、焙煎時間や熱のかけ方の違いによって味が変わります。
やり始めると終わりがない分野だと言われています。「コーヒー豆の焙煎をする人は、職人や研究職の気質があるこだわりのある人」と勝手に思っています。
焙煎度合を探求している小尾口さんの姿が目に浮かびます。





 ”自分の生き方が製品に深みを生む”が理想

「どんな人に使ってほしいですか?」という質問に、小尾口さんは、「自分の生き方が伝わり、製品に深みが出て、手に取ってもらう形が理想かな」と応えてくれました。 また、「ライフステージに寄り添っていけると嬉しい。例えば、仕事用に、名刺入れを買ってくれたお客さまが、家族ができたときには家具を注文してくださる、というように…」とも話します。 はじめに書いたPLYLISTの想い、「PLY(重ねる・素材や技術をより合わせる)」+「その人の暮らしや価値観に合うプレイリストをつくるようなものづくり」を具体化したイメージだと私は納得しました。 小尾口さんからは、他にも、「使ってみて、なるほど、と思ってもらえるものを作りたい。プラスチックと漆器の器くらいの違いを見せられるといい。 心が豊かになるとき(時間)を提供できたら。」と想いがどんどん湧き出てきました。




 ”挑戦し続けるPLYLIST

挑戦しつづける人には、憧れてしまうものです。PLYLISTさんが魅力的なのはどうしてだろうか、とふと考えてみると、“挑戦している姿”だ、と思いました。
そして、現在進行形であるところが魅力を倍増させているのでは!?と。
「丁寧な手しごとによる製品の金額、それに見合う人柄とストーリーを持ちたい」と語る小尾口さんには、ご自身の目指す姿が見えているのでしょう。
挑戦しつづけるPLYLISTは、新しい価値観と心が豊かになるとき(時間)を次々と生み出していくのではないでしょうか。これからPLYLISTがどうなっていくのか、目を離せません。



Instagram

⇒⇒ インスタグラムへ             


Twitter

⇒⇒ ツイッターへ             






【書いた人】
太田清美 2020年4月、名古屋から長野県上伊那郡箕輪町へ移住。
自然の近くで、季節を感じながら、山々を眺めたり、野菜づくりをしたり、 自分の暮らしのカタチを追いかけている。
風景、営み、人、文化、など一つ一つを味わい、 体感したことをいろんな人たちと共有していくことが嬉しい人。      


ご紹介した商品

カードウォレット 【PLYLIST】

45,000円(税込)